4 買取って、なんですか?――そもそも買取ってどんなことをしているんですか。
- Takezoe,BooksBooks
- 7月13日
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梁 われわれが買取というときは主に「出張買取」を指すことが多いんですが、お客様のところにお邪魔して蔵書を見て査定して、買い取らせていただくんですけど、普段赤の他人が家のなかに入ることって、エアコン取り付けとか引っ越しとかぐらいじゃないですか。その人の書斎に入るとか本棚を見る、本人が集めたものを一塊で見る、なんていうことはなかなかない。本屋の立場からすると、たとえば業者市場に出てくる本って、一回ほかの業者さんの目を通ってるから、当然ちょっといい本はもう抜かれていたりするので、本棚そのままの並びで見られる機会は貴重ですね。あんまり好きな言葉じゃないけど業界の言葉で、「初(うぶ)い」って言うんです。魚で言うと生け簀じゃなくて海にいる状態というか。それが見られるのが一番魅力というか、楽しいところですね。
マ そうですね。わたしの場合はそれこそ修業してこの世界に入ってるわけじゃないので、最初からほぼ買取が全て。だからなんというか、お客さんの本棚の並びで全部覚えてるんです。本を並べるときもこの本はあの人が持ってたな、だからこれを読んでる人はこれも読むはずっていうのがあって。理論立ててはいないけど、経験と感覚で筋のようなものに見当がつくところはあります。
梁 長年来てくれてはるお客さんでも、違う店で全然違うジャンルの本買ってて、えっ?あの人そんなんも買うの?みたいなことはあるね。
マ そうそう。そういうジャンル違いの意外性も含めて見ているので、省いちゃう本が多分、他の人より少ないと思う。この人は、あの本もあり得るだろうって。
梁 僕とかやと評価しないような、なんならもう無料でも持って帰らないようなものも、「でもこれ、ちょっと可愛いし」と査定したりしますね(笑)彼女のところで独自に売れるっていうものが結構あるみたいで、なるほど、ええ!そんなの売れるんや、今まで見逃してたでみたいな。
マ 逆に、私のほうに単独でくる依頼で全部棚ごと同じジャンル、っていうのはあまりなかったんですけど、先日このプロジェクトの第一回の買取があって、お客様のご自宅にうかがったら、トラック3、4トンぐらいの本のほとんどが英文学で、すごく貴重な経験でした。やっぱり、量の説得力というのは本当にある。
梁 僕はどちらかといえばそういうのが多いですけど、彼女と一緒にやることで市場では見向きもされないような本も、ちゃんと価値あるものとして扱える。お互いに買い取りできるものが増えるっていうのは組むことの強みかなと思ってます。
――どんなジャンルでも大丈夫?
梁 そこが難しいところで、硬いものから柔らかいものまでほとんどのジャンルに対応できるけど、何でも買えるわけではないんですよね。われわれは大手チェーンがするような、何でも5円10円で買うというようなことはしない。買えないものは買えないし、買うべきものはしっかりとした査定をさせていただく。だから同業他店が取りこぼすものでも価値があるもの、あるいは今は市場価値が低くても、捨てられるようなものではない、っていうようなものにもちゃんと価値を見出して残すっていうような、意義のあることをきちんとやっていきたいですね。
――買取のときに大事にしていることはありますか?
梁 若いころのほうが、こんなふうにはなりたくないとか(笑)色々こだわりがありましたけど、今はあまりないですね。うちは小さい店なんですけど、哲学とか日本史とか棚にプレートをつけてジャンルの縛りがわりとしっかり決まっているので、できるだけ硬派な本で棚を埋めたい。その分買取の幅が狭まるところはありますけど、専門分野については責任を持ってしっかり買わせていただいてます。
マ わたしは自分でも本を読むのが好きでこの世界に入っているので、逆にそれが本の価値づけを狭めないように気をつけています。もちろん好みはありますけど、選別の面では、さっきも言ったようにこの本はこういう本を持っている人が好き、みたいな知識をできるだけ幅広く蓄えるようにして、複眼的な視点を持つように気をつけています。あと、ネットでの相場に関係なく、さっき彼も言っていたように、この本は今はまだ評価されていないけれど価値がある、みたいな感覚を大事にしたい気持ちはすごくありますね。一見、店主の趣味で集めている本屋みたいな感じに見えると思うんですけど、意外とちゃんとラインがあるんですよ。
梁 よその古本屋さんの場合、買取に行って一冊ずつ査定するっていうことはあまりなくて、棚ごと一括で査定する人が多いんです。古書業界ではそのやり方が王道とされているような気がする。でも、お客さんからするとじゃあこれ一冊だけではいくらになるの?って当然気になると思うんです。だからうちは一冊一冊査定するし、まとまりで評価する場合も「この本は一冊ずつでは市場価値が低いが、系統がまとまっているので査定アップ」「この本は値段がつきません」とか、なるべくブラックボックスにならないよう、お客様にお伝えするようにしています。
マ うちも一冊一冊の査定のほうが多いですけど、やっぱりまとまりで見てこのあたりはこのくらいです、っていうことはあって、そういうときはやっぱりわたしも、わかりやすくお伝えするようにしています。あと、ここからここまでを見るっていう範囲を最初にお客さんに確認して、車への積み込み作業なども全部お客様の見えるところでしかしないとか、お邪魔した時に玄関やお部屋周りをあまりジロジロ見ないようにするとか、少しでも安心していただけるように気をつけてますね。
梁 偉い!昔は開けられるところは全部開けろって言う先輩もおったけどな。もちろん僕はそんなことしませんけど(笑)
マ あと、本をずらさず傷めないように運ぶには、紐のくくり方(縛り方)も大事ですよね。流派があるんですよ。わたしは大阪で近代文学をやってるお店に習ったんですけど彼とはまた違うんです。
梁 うちは岡山で父が伝授されたやり方で、ちょっと捻りが入ってるので紐がシュッと抜けない。だから催事ではスタッフや他の店に嫌がられれたりするんですけど、その分ブレないし頑丈なんです。






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