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1 成り行きから本業へ 2代目古本屋の苦悩と成長 ――梁山泊・島元草多さんの歩み

  • Takezoe,BooksBooks
  • 6月6日
  • 読了時間: 4分

更新日:7月13日



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——そもそも古本屋になろうと思ったきっかけは?

 

梁山泊・島元さん(以下、梁) 僕は2代目なので、一念発起して始めたわけでもないし、正直言って成り行きです… 親父の代から数えると創業50年くらいになるんですけど、店に関わるようになったのは22歳くらいからですかね。それまでも、ちょこちょこ催事のときにダンボール運んだり手伝いはしてましたけど、それも年に1回か2回で特にやる気があったわけでもないし、継ごうというつもりもなかったです。


——小さいころから家業を意識されていたわけではないんですね。


梁 そうですね。子どものころにお手伝したらお小遣いもらうみたいな、そういうことはうちは一切なくて、定期的な手伝いとかもなかったんです。ただ業界の中でも在庫が多い方の本屋だったので、家の中のあらゆるところに本と本棚と本の入った段ボールがあふれていて、友達が遊びに来ると「おまえんちすげえな」ってびっくりされてましたね。友達んちにいくと綺麗でいいなと思ったり。それぐらい本が常に身の回りにある環境で育ちました。うちは堅い本、いわゆる社会科学とか人文系の古書しか扱ってなくて、自分が読みたいような本は全然なかったんですが。自分が高校生の時に親父のところで働いていた人で、後に古書業界で独立された先輩がいるんですけど、その人についてバイトするようになって、今も毎年大阪天満宮でやっている「天神さんの古本まつり」を手伝ったりしてましたね。


——本格的にこの職業に関わるようになったのは?


梁 店に入って年くらい経った25歳のときに、親父から「もう給料払うのがきついから店はお前に任せる」と突然言われて、そこからいきなり独立採算でやるようになったのが本格的な始まりです。当時は母親が古書のまち(梅田の店舗)を実質的に切り盛りしてたんですが、父と方針が合わないところがあって。母は業者の市場に出入りする父に「もっと指定したジャンルの本を持ってきて」と言って、父は父で「問屋ちゃうんやからそんなに都合よく揃えられるか」って。そんなすれ違いもあったので母と一緒にこの店をやれと。本格的にやりだしたのはそこからっていう感じですね。


——お店がすごくいい場所にありますもんね。


梁 あの古書街ができたのが50年前で、阪急電鉄の創業者・小林一三さんが文化的な街をつくるんだという号令のもと今、古書のまちの会長をされている中尾松泉堂さんの先代に声をかけて関西の古書店を集め始めたんです。当時は梅田、特に茶屋町から中津付近は寂れていて、若者も一切寄りつかないような街だったらしいです。最近なくなっちゃいましたが、ロフトができたくらいの時期からすごく人通りが増えたんですけど。だからなかなか参加する古書店が集まらなかったそうで、当時岡山で店をやっていたうちの店にまで声がかかって創設メンバーから3か月遅れで梅田に出店しました。「誰か出せる若いやつおらんか」みたいな感じで呼ばれたそうです。


――お父様から引き継いだジャンルに加えて、ご自身で広げた分野はありますか。


梁 最初はほんまに何を扱えばいいか分からんかったです。父のやっていた社会科学や人文学の堅い本からなんとか延長線上で広げようと思って、最初は明治戦争関連の浮世絵を扱いはじめました。当時はそのあたりは人気がなくて安く仕入れられたんですよ。でも全然売れなかった。母に給料を待ってもらうこともしょっちゅうで(笑)。でも頑張ったら買えるものから少しずつ、江戸時代のものにも手を出したりしてどうにかこうにか試行錯誤を繰り返しながら、ようやくここ年で、経営的に苦しくないなと思えるようになった感じですね。


——嫌になって辞めたくなったりしたことはなかったんですか?


梁 独立する直前に辞めるわ、って言ったら、お前がやれ、って真逆のこと言うんで(笑)オカンもセットやから辞めるに辞められず今に至りました。無茶苦茶です。


——それでも結局古本が好きなんですね?


梁 僕は本が好きで好きで、という感じでこの仕事を始めたわけじゃないし、商売上は、読むための本というより研究や収集のための本ばかり扱ってきたので、自分のことを本好きと呼べるのか?みたいなコンプレックスはずっとあるんです。こういう仕事をしていると、本当にものすごい量の本を読んでいる人に出会うので、そういう人を前においそれと本が好きとは言えない・・・でも、19年ぐらい食うや食わずで自分の電気やガスが止まってもどうにか本を仕入れ続けて、一方で純粋に自分が読むための本もちょこちょこ買ってきたので、やっぱり好きなのかもしれないですね。

 
 
 

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